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2018年1月22日月曜日

ありときりぎりすと

以前書いた短文です
よろしければお読みください




ありときりぎりすと

幼少からこんな方法でやってきた。
まずは貯める。たとえばお年玉を。例えばバイト代を。集中的にバイトしてそのあとはそれを少しずつ使っていく。すると一日いくらで何日という計算ができる。
学校を出てから二つの職場で働いた。
一つは体をこわしてやめた。
もう一つは四半世紀以上続けた。別に仕事が合っていたわけではない。体調は常に悪かった。
中年にさしかかる頃からアーリーリタイアが常に脳裏にあった。
その後も限界が何度もきた。十年以上そこから耐えた。
そして勤め先は早期退職を募集した。そして私は応募した。
なりたいものがたくさんあった。
しかしそのどれもが生活の糧になり得ないようなものばかりだった。
たとえばドラマー。
たとえば物書き。たとえば、たとえば・・・
長いこと蟻を続けてきた。世の中のしきたりや辛酸も多少は覚えた。
しかし、心は成長しなかった。長いものに巻かれてやり過ごすとか自分を抑えるということがどうしても上手にできなかった。
それは格好のいいことではなかった。
若いまま年をとると世間ではそれを莫迦という。かっこいい莫迦ではない。扱いにくく困った頑固者の莫迦。
莫迦が途方に暮れてとりあえず幼少からやってきた方法でどこまで砂糖を取り崩し、どこまで太鼓をたたくキリギリスでいられるのか。

モニターに妙に頬のたるんだ少年のなれの果てが揺れる。5

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