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2018年2月6日火曜日

知られぬ名曲


知られぬ名曲

1980年アマチュアバンド全盛。
もてたければバンド。
楽器店もそれを全面バックアップ。
コンテストや無料ライブがあちこちで開催される。
それらのバンドの中にはたとえば、スーパースランプがいた。
のちの爆風スランプ。
サンプラザさんは本当に痩せていて、ステージ衣装に浴衣など着ているとたとえは悪いが戦前の病人のように見えた。
異彩を放つ。
リズム隊はおそらくプロではないかと思われた。
他のバンドとレベルが違ったが地元バンド連の中では異端。
「はじける若さ」「穴があったらでたい」という曲が当時の定番。
爆風スランプは別として、れらのアマチュアバンド連は当然、ほとんどメジャーにはなれず、しかし、いいバンドもいくつもあって、記憶に残る名曲もいくつかあった。
それらの曲は数回しか聴いていないのにいまでも時折思い出されて当時の空気とともに頭の中で再生される。
「少年」という曲があった。
少年が家出をして町を離れるという内容の曲だ。
スローテンポの重いビートで、しかしメロディーは覚えやすい。
今から思えばボーカルのひとは少し舌足らずの奥田民夫という感じで、歌は味があり、それらのバンド群ではある種大物感を醸し出していた。
イントロがベースで始まるその曲は少年の家出の情景を歌う。
すべての歌詞を覚えてはいないがサビの部分で「もしぼくがいま死んでも、鳥は歌い、風は吹くのかな」と繰り返されるところはゆっくりとした歌い手の動きとともに今でもよく覚えている。
そのとき、多少知恵がつきつつあった小僧の私は「自分が死んでも世界は今までと全く変わりなくえんえんと続いていくんだよなぁ」と当然の事実を認識し、その諸行無常感が絶えずその後の人生の随所で幾度となく繰り返されてきた。
死んだら自分はそこで終わり。
何もかもすべて無。
あのとき、あそこにいた友達や知らない人たちはあの曲を覚えているのだろうか。
覚えている人の中ではあの歌がたまには思い出されるのだろうか。
とくにどうという曲でもないかもしれない。
しかし「少年」は私の中では「知られぬ名曲」として今のところはっきりと記憶されている。

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