内勤の四季
純粋な内勤はつとめていた期間の内三分の一くらいか。
そのほかは外勤、内外半々、なにかにつけ表に出る機会がある職種だった。
季節は外出で知る。
春には桜があちこちに咲き、夏には額に汗をする(とくにがむしゃらに働かなくても)秋には色づく雑木林を見て、冬は昼飯に暖かい物が恋しくなる。
私はそういうルートだったが、どういう訳かずっと内勤のルートを行くひとがいる。
私の勤めていた職場ではだいたい三年ごとに人事異動があり、基本、誰もが何でもやる。私も総務セクション以外はすべてやった。
ずっと内勤のひとの四季はどのような物なのだろう。
何年も屋内にいて、昼休み以外には表に出ることもなく。
見える景色は窓の外だけ。
その窓も、場合によってはブラインドで遮られ、蛍光灯の明かりの下。
机の上に書類を広げ、ディスプレイと書類を視線が行き来する。
電話がかかってきてそれに答え、打ち合わせをし、机に戻る。
それが20年続く。私には耐え難い。
やはり、晴れた日の日中は仕事であれ気持ちがいい。
時間があれば何気ない神社にほんの少しお参りしたり、鬱蒼とした林道の端に車を止めて休憩をしたりする。
五月は栗の花が濃くにおう。
そして思ったより雨が多い。
小雨の林道でフロントガラスの水滴越しに霞む青葉の木立と稲田をぼんやりと見ている。次のアポまで時間があいた。
そんな時にはいやがをにも季節を感じさせられた。
今はいろいろなところのそんな風景、県内のさまざまな林や小径、公園から見える風景ばかりランダムに思い出したり、夢に見たりしている。
ひとと話すことが苦手で、営業などとんでもないと思っていた。
しかし配属はほとんど対人業務だった。
すこしは適応があったのだろうか。
嫌なことが必ずしも苦手とは限らない、が確実に四季毎に心は蝕まれていった。
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