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2020年6月26日金曜日

四角いドラム

四角いドラム

 

いつもは朝の六時くらいから断続的に十一時くらいまで、書き物の時間に当てている。テレビはつけっぱなし、子供たちは学校へ行くためにばたばた、ひとり定位置でかしかし打っている。いま、十二時前、すでに昼食はすませた。かけそばと卵焼き。ここで酒好きの人ならば一合ばかりガソリンを入れておきたいところだろう、と妻に話したら、そういうのが面倒で女の人は表に出てしまう、と言っていた。女は連むのが好きだから、と。男は組織から離れたら孤立。何かの会合で男同士が話す内容とは。おそらく現役時代の仕事のことや、すぎた昔のあれこれや。興味ない。最近、昼もマンネリ化してきた。インスタントラーメンが好きで、毎昼食それで構わないと思っていたが、すぐに飽きた。そして、今はそば。和風の濃いつゆの味に慣れてしまいつつある。塩分過多。よくない。温かいかけそばを食べ終えて少しからだが熱くなった。食卓を明るくする吐き出し窓をいっぱいに開いてみる。今年は梅雨に入っても例年に比べて蒸し暑くなく過ごしやすく感じる。下階の占有庭に植えられた桜が気のせいか去年よりも葉を蓄えて、てんでにうなづくような揺れかたをしている。そこからだろうか湿った植物の匂いがかすかに網戸ごしに感じられる。ここのところいつも出かけようと言う昼過ぎの時間に空模様が良くない。どんよりとして外出を億劫にさせる。外出にも目的があるわけではない。歩かなければ健康によくないというかすかな引っかかりを気にしているだけだ。かつて、日本の小説の主流は私小説だった。何気ない日常をありのままに書く。あるいは波乱の生き方を記録する。わざわざネタをひねり出すように破滅的に生きた作家も何人もいた。酒、借金、極貧、病、不幸。いずれも幸いにして今のところ無縁だ。そのような日常は私小説たり得るのだろうか。もしも私が書くならば題名は「四角いドラム」。メモを取っていた。四角いドラムを見たことがない。皮を張るのが難しいからだろう、と括弧書きがしてあった。

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