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2020年6月18日木曜日

たばこ

たばこ

 

煙草をやめて十七年になる。

未だに夢を見る。

いつの間にか、煙草を吸って、いっぽんにほんならいいか、と言い訳しながら激しく後悔する夢。

一本、試しに吸ってみたらおそらく元の黙阿弥となるだろう。入院して吸えない環境に置かれた。そのまま何となくやめてみて現在に至る。

あれからずいぶん煙草も値上がりした。それまでは一日に二箱は吸っていた。そういえば当時はパチンコもやっていた。おもにその景品で、カートンで入手していた。かなり高い煙草になることもしばしばだった。

はじめての煙草は、とても空気のいい高台の雑木林の中だった。鼻から抜ける呼気の煙の枯れ草の燃えるような少し刺激のあるいい匂いはいまでもそのときの光景とともにありありと思い出せる。吸いなれるにつれてその香りは単なる臭いとなり、惰性の習慣となっていった。吸うのが早かった。一度にたくさん吸い込むので煙も多かった。当時の自分と酒席で同席したら耐えられない。

吸っていただけに他人の煙にはとても敏感になる。いま煙草は当時と比べてとても吸いづらくなっている。心からやめられてよかったと思う。しかし、たまに、濃い副流煙を心ならずも吸い込んでしまったとき、あの雑木林での隠れ煙草を懐かしく思い出してそれは不快ではなかったりする。

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