私のような勤め嫌いの人間でも、長年勤めていると人生の決して少なくない時間を職場で過ごしてきたわけで、人生の様々な局面も職場とともにあった。
例えば結婚したとき、子供が産まれたとき、家族で旅行に行ったとき、家を買ったとき、車を買い換えたとき、妻が勤めを辞めたとき、楽しかったりそうでなかったり様々な思い出が、職場での職務と同時に記憶されている。
あのときはあの顧客を担当していて、結婚のお祝いをもらったな、とか、あのときは仕事的に本当につらいときだった、とか、思い出が仕事に紐付いている。
仕事とともに今までの人生はあったのだ。それで食べていたのだから当然といえば当然、その記憶を消し去るという事は出来ない。
が、基本的に過去にしがみついていたくない。戻ることの出来ない橋をすでに渡って何年も過ぎた。
この生活にもなじみつつある。
職場を抜いた、元サラリーマンの人生。いつか、とうに忘れた初めての職場のように、この間まで勤めていた職場の記憶も薄れて、上司や同僚、部下のことも忘れ去ることになるだろう。結局、最後には個人が残る。相手からも忘れ去られて一人残される。そこからが長い。
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