親子丼のおや抜き
親子丼から親を抜くと玉丼になる。卵、タマネギ、ナルトを刻んだようなものを甘辛いツユで玉子とじにしてどんぶり飯に乗せる。あまり玉子丼を頼んでいるひとを見ない。少しの金額で親、つまり鶏肉が入るし、もう少し出せばトンカツが入りカツ丼となる。カツ丼・親子丼の価格-玉子丼の価格=お得感を見いだせるか。この数値は親子で100から200、カツで200から300くらいか。しかし、チェーンの「かつや」のようにそもそもの値段設定がそば屋の玉子丼よりともすれば安い店もあり、そこそこうまい。そば屋で昼食をとることはほとんど私の場合にはなく、なぜなら値段の割に満腹感が得られないというなんとも貧乏くさい理由なのだが、それと同時に鰹出汁の濃厚なそばつゆの香りが店先から漂わなくなったと感じるところも理由の中での割合は少なくない。つまり、そそられないのだ。もう一つの理由は、つい最近まで、固まりの肉が苦手でカツ丼が食べられなかったということもある。今は、積極的にとは言わないがカツ丼もなんとかできる。以前ならば、みんなでそば屋に行かざるを得ず、そばでは腹が満たされず、丼物となってしまい、玉丼を頼むのがケチなようで嫌だった。実際カツ丼を勧められたこともある。大きなお世話だ。いろいろな事情が人にはある。世の中にはカツが苦手だったり、刺身を見るのもいやだったり、うなぎなんてとんでもないという人もいる。私だ。人生損をしているとよく言われるが嫌いな物を無理に食べさせられる苦痛の方がよっぽど人生の損失。玉丼から人生の損失。大げさな話だ。自分で玉丼を作ることもある。その場合は、あれば、出来合いで構わないのでコロッケをカツに見立ててコロッケ丼にする。または、揚げ玉を入れて、狸丼にする。狸丼は勤め始めた頃、そば屋で知ったメニューだ。それこそどんぶりの中では外道めくが、それは私の知っている範囲だけの話で、それがメジャーな、ともすれば玉丼といえば揚げ玉(天かすというかもしれない)が入っていて当然という地域もあるかもしれない。もしそういう玉丼ならそれはそれでおせっかいな玉丼かとほんのり思う。