チャーハンのスープ
チャーハンについているスープ。あれおいしくないですか。鶏ガラのスープ。やけにとがっていて、ネギが散らしてあるのがまた、アクセントとなって、口の中を引き締める。あの味が昔から変わらないのはうれしい限りだ。カレーが粉っぽい味わいを失い、トマトが、ピーマンが、白菜が、牛蒡が、人参が、癖を失いどんどんマイルドに平坦になっていく中(それが悪いなどとは言わないし昔がよかったという気はない)、鶏ガラとたれによるシンプルなスープは変わりようがないのだろう。昔ながらの東京ラーメンはガラとタレのシンプルなつゆだろうが、食べていく間に麺が少しずつつゆに溶けて味の尖りが丸くなっていく。チャーハンのスープは麺が入らないので尖ったままだ。チャーハンは食べ物としては平板な物なのでスープの尖りは音楽で言うところの一瞬のブレイクのような、口の中をがらりと変える重要な役どころだ。レッドツェッペリンのプレゼンスにある何曲かのような緊張感のあるブレイク。たとえば、これが、中華風コーンスープや玉子スープだったら。ちょっとあり得ない。ジャンルを違えて、コンソメスープだったら。何となくわかるが、すこしこじゃれたたたずまいの中華屋というよりチャイニーズ何だか、といった店で「あえて」とか言われて出されるとその「あえて」に至る思考過程によほどの哲学が感じられなければ査問の対象となっても店主に同情はちょっとできない。
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