スキットル
深夜まで作業を続けて、大した物を食べたわけでもないのに、どんどん胸焼けがひどくなっていく。近頃、それが嫌であまり食べないようにしているのだが、それでも生じる胸焼けは、大根の千切りを生で食べることにより少しは押さえられているはずなのだが、あまり飲みたくない胃参のたぐいを仕方なく服薬しようと、テーブルをみたが見あたらない。そもそもこのテーブルは何故こんなに物が散らかっているのかと半ば憤慨しながらかき回していたら探しては忘れしていたスキットルが見つかった。骨董市でよく見る品のベストテンに入るだろう、鉄製の、旅先で飲むウイスキーなどを入れておく、あの、大人の水筒ならぬ酒筒。たしか、買ったときに、中に酒が入ったままだった。もちろん捨てた。流しにあけた液体は薄茶で、強くアルコールの匂いがしたが、人手に渡すとき、あえて中に洋酒を入れてそれ込みの売価を提示したのか、単なる入れ忘れだろうが、そんな売り買いのやりとりを僅かに深夜想像する。外見をさっと水洗いして、アルコールをしめした濡れティッシュでひととおり吹くと、ステンレスのヘアライン仕上げの地がみえた。当初、皮が巻いてあったが金属むき出しの方がいいと剥がしてしまった。その分痩せて、蓋と本体の段差がついたがこの方が私は気に入っている。古い物のはずなのだが、ステンレスのため錆びない。それともそれほど古くも無いのだろうか。いずれにしろ、中に入れるのは酒類以外思いつかない。しかも旅のお供のちょっとしたキャップだから、量的にはたくさん入らない、が、酒弱の私にはちょうどよく、どころかストレートならかなり酩酊するだろう。禁酒をする前にコーヒーを焼酎につけた。瓶の中で漆黒に育っている。それでも詰めて、禁酒一年過ぎの電車旅行へでも出かけようか。そのころには、職を辞して一年だ。
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といってもう3年 何処にも行っていないのでした
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