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2020年11月23日月曜日

異動

異動


 

久方ぶりに外出をしたら、すっかり空気が秋に変わっていた。今年はほとんど夏を過ごさなかった、というようなことを妻に言ったら、今年はほとんど夏らしい日がなかったじゃない、と返され、ああ、そういえばそうだったな、と改めて思い起こした。曇りと雨。台風。九月になると夏が盛り返してくるかと思ったら、このまま秋に入るのか、それとも、季節はずれの夏が十月にくるか。十月と言えば、小規模な異動の季節だった。大規模な異動は四月にある。秋の異動は、基本的にないとわかっていてもやはり公示があるまでは落ち着かない。変則的な異動なので、異動者に対しての憶測もいろいろと飛び交った。しかし、遠くに行くことはまずない。四月の異動については年明けぐらいからいろいろと噂が出始めて、事実、上の方ではなにやら怪しげな動きが活発化するのだった。どうせ勤め人ならばそこまで上がればさぞおもしろかっただろう。と、同時に重責で私なぞは胃が潰瘍まみれになったことと思われる。器ではないのだ。そして、言われたところに、文句も言わずに飛んでいく。そこがたとえ山梨だろうと、文句も言わずに飛んでいった。どうせこうなることならば、ごねれば良かったかもしれないがもう遅い。山梨から帰ってきて四年で辞めた。同じ部署に三年以上いたことがないので四年目はもう飽き飽きしていた。おそらくは異動になって、どこに飛ばされるかわからなかったのも辞めた理由の一つであった。東京方面の満員電車に乗りたくなかった。そういう人生を送りたかった。 

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二年前の秋の話です

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