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2021年2月18日木曜日

不審者

 不審者

 


昼間からうろうろ不審者。スーツを着て、首に社員証をつけて、子供に目的の家の場所を訊ねる。意識の中では仕事で来ているというベースがあるので、不審者ではないと思っている。これが、私服で、何の目的もなければ、というより、暇に任せてランダムに何らかの方法で住所を特定し、そこを訪ねて現地を確認する、そんなゲームの一環として住宅地をうろうろ。不審者ではないといっても通用しない。何の目的で。ミッションです。何の。それは言えません。ちょっと来てもらえますか。となるだろう。そこで、何の組織にも属していないとなれば信用ゼロ。アリバイを証明するのは身内だけ、しかし身内の証明はアリバイにはならない。家にいた。本当か。本当に家にいた。誰か証明できるか。だれも証明できません。目撃情報に背格好、衣類、年回り、偶然一致。恐ろしい。ないとは言えない。私がなにより恐ろしいのは身体の自由を奪われること。拘束だ。体を動かそうとして動かない。きつく身動きを抑えられる。それが病的に恐ろしくなりしばらく前から服薬を始めたことも退職の遠因の一つなのだった。

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